「自社の取り扱い商品(SKU数)が数万点、あるいは数十万点を超えるが、システムのパフォーマンスは維持できるだろうか?」

ECサイトの規模が拡大するにつれ、多くの事業者様が直面するのが「大量の商品データによるサイトの重さ(表示速度低下)」という課題です。一般的なECプラットフォームでは、商品数が1万点を超えたあたりからデータベース(DB)への負荷が目立ち始め、ページの読み込み速度が著しく低下することがあります。

しかし、世界最大級のシェアを誇るECプラットフォーム「Magento(Adobe Commerce)」であれば、10万点、あるいは100万点を超える大規模なカタログデータであっても、適切な設計と最適化を行うことで、高速かつ安定した運用が可能です。

今回は、大量の商品点数を扱う場合にMagentoがなぜ強いのか、正常なパフォーマンスを最大化させるための3つのベストプラクティスについて解説します。

なぜ商品データが増えるとECサイトは重くなるのか?

どんなシステムであっても、データ量が増えれば読み込みや書き込みの処理にかかる時間が増加します。特にECサイトでは、商品名、価格、在庫数、商品説明、カテゴリ、カスタム属性など、1つの商品に対して無数のデータが紐づいています。

Magentoのデータベース構造は、標準ではEAV(Entity-Attribute-Value)モデルという、非常に柔軟で拡張性の高い設計が採用されています。これにより、アパレルから製造業・BtoB向け製品まで、どのような商品属性でも自由に追加できるメリットがあります。しかし一方で、データ量が増えすぎると、裏側で発行されるSQLクエリ(データベースへの命令)が複雑化し、読み込み速度が劣化しやすいという仕様上の課題を抱えています。

これを解消し、大規模サイトでも驚異的なパフォーマンスを維持するために、Magentoには最初からいくつかの高度な機能とベストプラクティスが用意されています。

大量の商品点数を扱うための3つの最適化手法

1. 「フラットテーブル(Flat Table)」の有効化でDB負荷を大幅軽減

複雑なEAV構造のデータを、フロントエンド(ユーザーが見る画面)用に1つのシンプルなテーブルへ書き出す仕組みを「フラットテーブル」と呼びます。これを有効化することで、商品情報やカテゴリ情報を取得する際のSQLクエリが単純化され、データベースへの負荷を劇的に下げることができます。

💡 Magento 2系での運用のポイント

Magento 2では、インデックスの自動更新(Cronジョブ)の仕組みが非常に強力になっています。フラットテーブルを有効にした直後は再インデックスが必要となります。管理画面またはコマンドラインから以下のコマンドを実行し、インデックスを最新化してください。

php bin/magento indexer:reindex

2. 商品URLからカテゴリパスを除外し、データの肥大化を防ぐ

Magentoの初期設定では、商品ページのURLに所属するカテゴリの階層が含まれることがあります(例:example.com/category/sub-category/product.html)。

1つの商品が複数のカテゴリに所属している場合、それぞれのカテゴリ経路ごとに異なるURLが自動生成されてしまいます。商品数が数万点に及ぶ場合、このURL生成データ(URLリライトテーブル)だけで数百万件規模にまで膨れ上がり、パフォーマンスを圧迫する大きな原因となります。また、SEO(検索エンジン最適化)の観点からも、重複コンテンツとみなされるリスクが生じます。

【対策】
管理画面のシステム設定(カタログ > 検索エンジン最適化)にて、「商品URLにカテゴリパスを使用する」を「No」に設定することを強く推奨します。これにより、URLは常にシンプルな1パターンに統一され、データの不必要な肥大化をストップできます。あわせて、Canonical(カノニカル)タグの設定を有効にしておくことで、SEOへの好影響も期待できます。

3. URLキーをみだりに変更しない(リダイレクトデータの蓄積防止)

Magentoには、商品のURL(URLキー)を変更した際、古いURLから新しいURLへ自動的に301リダイレクトを設定してくれる便利な機能があります。これにより、リンク切れ(404エラー)によるユーザーの離脱を防ぐことができます。

しかし、この仕組みを知らないまま大量の商品のURLキーを何度も変更してしまうと、過去のリダイレクト履歴データがデータベースに蓄積され続け、システム全体のレスポンス低下を招きます。商品の公開後は、基本的にURLキーは固定で運用し、大規模な変更を行う際は事前にインフラへの影響を確認しておくことが重要です。

まとめ:大規模ECの成功は「適切な初期設計」と「インフラ選定」

Magentoは、10万点以上の大量の商品データを管理できる強固なプラットフォームですが、そのパワーを100%引き出すためには、サイト構築初期におけるパラメータの最適化適切なサーバー環境(CPU・メモリ・キャッシュ構造)の選定が欠かせません。

大量SKUを扱う際の見直しチェックリスト

  • カタログのフラットテーブル化の検証(サードパーティ製拡張機能との競合チェック)
  • 商品URLのカテゴリパスの除外とCanonicalタグの最適化
  • 不要なURLリライトデータのクリーニング
  • データ量に応じたサーバーリソース(VPS・クラウド環境)のチューニング

初期設計をおろそかにしたまま商品データやアクセス数が増加すると、後からのパフォーマンス改善には多大なコストとリスクが伴います。立ち上げ時、あるいはリニューアル時にしっかりとした構造を担保することが、大規模ECサイトを成功させる最大のカギとなります。

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